forming patterns
2025
上條陽斗
本作は、富士吉田の老舗織物工場・槙田商店と共同開発した、立体的に変形するジャカード織のテキスタイルを用いたインスタレーションである。アーモンド型の同心円状の模様が連なる生地は、縫製や加工ではなく、織組織そのものの伸縮差によって立体的に立ち上がる仕組みになっている。上條はその特性を活かし、富士山の形をひとつの造形フォーマットに捉え、視点の移動によって内側と外側、山の"裏"と"表"が反転する空間を構成した。
鑑賞者は中央に敷かれたカーペットの上で身を屈めて布の筒をくぐるようにして内部へ入る。頭上には逆さにそびえる山の光景が現れ、異なる気圏へ移動したような感覚をもたらす。また、空間を回り込んで外側から眺めると、内部で見た布の"陰影"が反転し、柔らかく漏れ出る光として、浮かび上がる。布がひとつの境界膜となり、一空間に複数の視点を併存させているのも本作の特徴である。
上條は本作の着想にあたり、版画家ギュスターヴ・ドレによる『神曲』挿絵の「至高天」を参照したという。ダンテが旅の最終地点として目指す「至高天」は、天国篇の最奥部に位置し、神の光に包まれた世界の根源を象徴する場所である。本作の布の膜をくぐった先に立ち上がる光景は、その高みに向かう視線の運動を想起させ、富士山が古くから「天国に最も近い場所」と考えられてきた信仰とも響き合う。
富士吉田でのリサーチから得た山脈や自然物の形態的イメージ、そしてテキスタイルの物理的特性が結びつくことで、本作は「山を見る」という行為そのものを、光と布と身体の移動によって再構築している。
(文:丹原健翔)
写真1〜3枚目:Shuhei Yoshida, Keigo Suzuki(Courtesy of FUJI TEXTILE WEEK)
keywords
jacquard weaving、テキスタイル、インスタレーション
制作協力
株式会社槙田商店(テキスタイル)
シチズン電子株式会社(照明)
展示
FUJI TEXTILE WEEK 2025 FUJIHIMURO 2025, 山梨(富士吉田)






